ここは、田舎から出てきたどこーにでもいそうな学生≪ちくわ≫が、日常に流れているあれやこれやを拾い集めて、ある日はすりつぶし、ある日はこねまわし、ひそやかに物語に練りなおしてゆく――そんな場所なのです。

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エピソードワンとは何か

前日譚を語るというのは、はじまりの物語を語るというのは、「それはそう」だった世界を「それはそうではなかったかもしれない」世界として描き直すということである。

たとえば、ある家庭で父親がいつも料理を作っていたとしよう。家で出てくる味噌汁がいつも麦味噌だったとして、子供たちはそれを麦味噌だということすら知らないかもしれないし、知っていたとしても味噌汁は麦味噌なのだろうといって、とくにそこに疑問は抱かない。

ところが、あとになって聞いてみれば、本当は父親は麦味噌ではなく麹味噌が好きで、独身時代は麦味噌で味噌汁をつくっていたのだけれど、母の住んでいた地域では麦味噌を使っていて、新婚時代にそれで大げんかになり、それ以来麦味噌になった――というようなエピソード(味噌汁エピソードONE)が発覚するかもしれない。

それまでなんの根拠もなく味噌汁はこの味噌だと思っていたものが、実はそれは麦味噌という味噌で、その麦味噌になった理由が具体的にあったということを子供たちはそこで知る。別の言い方をすれば、「どうして味噌汁はこの味なのか」という理由を、子どもたちは「それまでより明確に語れるようになる」のである。

ここで不思議な事態が起こる。

ぼくたちは、あるものごとについて確信を持つためには、それがそうなった理由や論理をきちんと正確に知ることが必要だと考えている。「どうしてこうなったのか」を知れば知るほど、なるほど間違いなくそうなのだとわかるような気がしている。それも一面的には事実なのだけれど、ある意味では真逆のことが起こっている。

味噌汁の例を続けるならば、彼らはそれまで味噌汁の味は味噌汁の味で、そこになんの疑問も抱いていなかったのに、それがそうではなかったかもしれない可能性――両親が昔喧嘩をしていなければ、俺たちにとっての味噌汁はこの味でないこともありえたかもしれない――を考えてしまう。

それはたぶん、言語というものが、なんらかのゆるふわ空間とセットで使われるもので、「丙」ということばは「甲でもなく乙でもない丙」という含意なしには語れないものだからだともいえるだろう。語ろうと思わなかったときには間違いのないものだったものが、語った瞬間にワンノブゼムになってしまう。

別の比喩でいうならば、「この先しばらくみちなりです」と言われたから迷わずぼーっと進むけれど、あとから地図を見てじつは獣道を通れば相当な近道ができたということを知る――そういう意味で、エピソードONEをわざわ語りなおすというのは、「それはそう」だったものを揺らがす行為なのだと思う。


クドクドとなんの話をしているかといえば、 本日21時から金曜ロードショーの枠でオンエアされる、「名探偵コナン エピソードONE ~小さくなった名探偵~」の話である(なんやてクドウ!)。 今日はぼくはなっちゃんのキャスを聞くという大事な予定があるのでコナンは録画で見るけれど、それはともかく、 原作者の全面監修のもと作られたという完全新作で、その名の通り、20年前に放送された第一話「ジェットコースター殺人事件」で描ききれなかった物語が描かれる――らしい。

ぼくらコナン懐古厨一派は、「最近のコナンは……」とかいってるうちに10年なり15年なりが経ち、いよいよ懐古厨している時間のほうがコナン史のなかでは長くなっているのではないかと思うけれど、一体この第一話リメイク(リメイクとはいってない)をどういう気持ちで見るのだろう、ということを考えていたのだ。

味噌汁の味を意識していないように、 工藤新一がどうして小さくなったのか、ぼくたちはそれほど気にしない。もちろん、未完成だった薬の副作用でぇ~~とちょっと思ってたけどじつは組織がこっそりやってる研究につながっててぇ~~などと、既存の設定をペラペラとしゃべることはできるけれど、そもそもぼくたちにとっては、工藤新一の体が縮んでいることはあたりまえのことで、話題に出すような対象ではない――だって、それがなければ名探偵コナンなどという物語は存在しないし、ぼくだってこんなところでコナン君の話などしていないのだ。

エピソード1を語り、 「工藤新一はなぜ、江戸川コナンになってしまったのか」、それが(今までとは別の説明で)描かれなおされれば、ぼくたちは否が応でも彼が縮まなかった世界(があったかもしれないこと)を考えてしまうことになる。そして、それでもやはり、ぼくたちは彼の体が縮んだ世界しか考えられない――それはフィクションの中でも、ぼくたちの世界の側としても――ということに気づき、その二重性に引き裂かれるのではないだろうか。

この点こそが大事だと思う、だって、これこそがぼくたち懐古厨のもつジレンマの縮図だからだ。つまりぼくたちは本当は、 「工藤新一はなぜ、江戸川コナンになってしまったのか」を語りたい (観たい) なったのではなく、「工藤新一が江戸川コナンになってしまったこと」を語りたい(観たい)のだ。

20周年――その節目にぼくたちが第一話(を深く描いたリメイク)をみんなでこうして見るのは、ぼくたちが大なり小なりコナンを愛しているからだろう。 もちろん、ほんとうに第一話からリアルタイムで見ていたひとはほとんどいないにしても、少なくとも10年なり15年なり前の、それぞれの生きている世界で、胸弾ませて月曜の夜7時半を待っていたころの、あのときの体験を大切にしたいと思っているからだろう。

せやけど工藤、いや工藤やのうて――くどいようだけれど、「大切なあのときの体験」を客観的に語ることなんてできない。だからぼくたち懐古厨は苦しみに苦しむのである。そして、一般にある妥協案として、その始原を客観的に語り直すという方法をとるのではないだろうか。


総じて、エピソード1を描くのはとても切ないことだといえる。語れば語るほど、たったひとつの真実に近づいていくようでいて、真実の真実性はゆらいでいく。「あの日、あの時、それぞれの場所で本当は何があったのか」、それが見事なロジックで明るみになっていくその裏側で、「それはそう」だったはずのはじまりは相対化されてゆく。

けれどいっぽうで、コナンくんはコナンくんで、「味噌汁の味」は「味噌汁の味」である。それが麦味噌であると知って、麹味噌でもありえたかもしれないと知ったところで、自分がそれに慣れ親しんでいることは変わらない。ぼくたちのなかでコナンくんはコナンくんなのである。それが、コナンを好きだということで、懐古厨だということなのだから。

だからこそ、懐古厨よ、エピソード1を見よう。

たしかに、 「これは俺の事件だ!」と両親に啖呵を切っていたコナンがFBIやCIAや公安の助けをぽんぽこ使っているのはいかがなものかとか、 ボール射出ベルトはいつから何個もボールが出せるようになったんだとか(『天空の難破船』ほか多数)、涙を流さないという一点がコナンに唯一守らせたいことだったんじゃなかったのかとか(『絶海の探偵』)、音痴なのに絶対音感なのはどうなんだとか(『戦慄の楽譜』)、ぼくたちは越水七槻が好きなのであってボクっ娘女子高生探偵なら誰でもいいわけじゃないんだとか、そういうことを思うときもあるだろう。

だけれど、そんなことがいいたいわけじゃないだろう。ほんとうは、ただぼくたちはあのn年前に自分たちが名探偵コナンを見て心から楽しんでいたということをいいたいだけなんだ。

そして、そういうぼくたちの好きだったコナンくんのことは、今が悪いとか悪くないとかとは全く別次元で、そのまま説明することができないものなのだ。それを説明するためにことばを尽くしても、ことばを尽くせば尽くすほど、ぼくたちは不安になってゆく。

だけれど、その切なさを乗り越えてエピソードワンを見よう。コナンくんを追い続けよう。相対化されても、だいじょうぶ、思い出は大事に持っていればいいんだ。 コナンくんに思いを寄せて悲しい表情をしていたころの哀ちゃんが最近すっかりそんな表情も見せなくなったのだとしても、それはそれとして、大切にしまいこんで、どうしてだかコナンくんが生まれてしまった世界で、 ぼくたちが好きなコナンくんを、追い続けていこう。



ああ……ちがうんだ……ぼくはコナンが好きなだけなんだ、コナンが…哀たんが…(ここで力尽きる)
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灰原哀というキャラクターの揺れについて<1>

運命なんてものはな、
にげるものでも、

あきらめて受けいれるものでもない。
たたかうんや。

たたかって、はじめてどうにかなるもんなんやで。
(あさのあつこ『時を超えるSOS』)
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まず、昨日のコナンの記事でブログを読んでくれた方が予想以上にいました。

いや、正直に言うと多少は期待していたけれど、本当にこんなに来ていただけるものなんですね。

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べ、別にそれで急に読者を意識しはじめたわけじゃないんだからねっ!

今日こまごまとしたことを書こうとしてるのは偶然なんだからねっ!

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以下、こまごまとしたことを3つ

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1.

頻繁にブログを読んでくれている人ならわかるとおり(哀しいので一度しか言わないが、アクセス解析を見る限りそんな人はいない)、数日前からフォントをゴシック体に変えてみました。

そもそもWindows Live Writerのデフォルトがゴシック体でも明朝体でもなかったのは謎です。←僕の勘違いかも

とにかく少しは読みやすくなりましたね。

背景は白の方がいいのかな?

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2.

日によって記事を「です・ます」調で書いたり「だ・である」調で書いたり、表記がゆれてますが、許してください。

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3.

出来る限り毎日更新を目標にしてます。

ただし日付が変わって更新したものは(日付的に)前日の23時50分の設定にして投稿します。この記事もそうです。

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さすがにこの記事がここで終わってしまってはアレ(ここでいうアレとは、万が一昨日の記事を読んでここを読もうか迷っている人がいたときに、「なんだこいつコナンの記事書かないじゃないか」と思われて見放されてしまうことである)なので、コナンのことを書きます。

水曜日だしサンデーの感想書けばいいやん、って思ったけど先週が合併号だったから今週はないんだよ!!

.

てことで哀ちゃんのことについて書くことにしました。

そういえば僕は灰原哀が好きなのに昨日の記事では一回も灰原と言う単語を使っていなかったような気がします(シェリーとは書いた)。

以下、ミステリートレイン編……というか78巻のネタバレを含みます。

あと、突然「です・ます」調が消えます

続きを読む

『名探偵コナン』78巻発売。 ミステリートレイン編について改めて考えてみた。

完璧なんてこの世にはねぇよ。
絶対どこかで歯車が噛み合わなくなる。
そのまま無理矢理動かして何もかもダメにするか
一度リセットして正常に戻すかはその人次第。
アンタは怖かっただけだよ……リセットするのがな。
(『劇場版名探偵コナン 探偵たちの鎮魂歌』)

.

『名探偵コナン』を好きになって10年が経つ。
(最初に録画した回が2003年1月の『揺れる警視庁 1200万人の人質』だったと記憶しているので、ちょうど10年だなぁ)
まずアニメを毎週見るようになり、途中から古本で過去の巻を集め始め、高校に入る頃には新刊が出るたび書店で買うようになっていた。
いまでは少年サンデーの連載を毎週読んでいる。
.

そして、一部の世間を騒がせた"ベルツリー急行殺人事件"も、この夏サンデー誌上で読んだ。

78巻も発売されたことだし、その事件……ミステリートレイン編についてそろそろ書くことにしてみた。

.

当然ネタバレの嵐なので読んでない方はここでさようなら!
(きっと来年の初夏にはアニメ化されますのでお楽しみに(?) )
続きを読む方は↓を展開してください

.

続きを読む

僕は日本人です、あなたは何人ですか? ――私は1人です

『名探偵コナン』の58巻には、こんな話が収録されている。

ある会社の社長がホテルで殺害される。

その社長は、モデルとしてスカウトした外国人と会う約束をしており、その外国人が疑わしいということになり、諸々の事情から4人の”外国人”が容疑者として捜査線上に挙がった。

さて、奇妙なことに、現場からは被害者が書いたメモが持ち去られていた。

そのメモには、”bring my tux”(=私のタキシードを取ってきてくれ)という、外国人の秘書に宛てた伝言が書かれていたと判明。

一体犯人はなぜこのメモを持ち去ったのだろうか。

これは被害者が残した何かのメッセージなのだろうか。

………。

…。

 

で、結局どういうオチかというと、犯人は外見は西洋人だが生まれも育ちも日本の日本人で、英語が読めなかった。

社長を殺害したあと、社長が英語で何かを書いていたことに気付き、何か自分のことを書かれていたのではと怖くなってそのメモを持ち去ったのである。

結局、英語が読めないことが手がかりとなり、別の証拠なども合わさって事件は無事解決される。

 

日本は、なんだかんだいってまだまだ色んな民族がナチュラルに共存してるとは言い難くて、生まれも育ちも日本の純粋な「日本人」でも、見た目(人種?)が日本人から離れているだけで、日本人として見てもらえないようなところがあったりする。

この事件は、そういった日本人の人種に対する感覚をうまく利用したトリック(?)だといえよう。

 

……みたいな例を2つ、3つ書いて、『名探偵コナンにおける、日本人の人種に対する感覚を利用したトリック』なる主題でエッセイ(英語)を書いて提出した。

テーマが”Race”だっから無理矢理こうしたんだけど……正直、やめとけばよかった。

 

今日大学でクラスメイトに内容を簡単に説明してる時点で「何言ってんだ俺…」状態になり、早くも後悔の念でいっぱいだったよ!!!!

しかも今これを書いてて気づいたけど僕たぶん「bring my tax」って書いてた!!!!税金もってこられても困るってね!!!!

 

まぁともかく、そんなこんなで昨日は徹夜してそれを書いてたのでめちゃ眠いです。

さっさと寝ます……。バタリ

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